エントロウイルス感染症 †
概念 †
- エントロウイルスは、主に腸管で増殖する小型RNAウイルスである。
エントロ(entero)は、腸管を、ピコ(pico)は、小さいRNAを意味する。
- ポリオウイルス、コクサッキーA群ウイルス(CA)、コクサッキーB群ウイルス(CB)、エントロウイルス(EV)などの多数のウイルスが含まれる。
疫学 †
- エントロウイルスの一般的な感染経路は、糞口あるいは、飛沫によるヒト―ヒト感染である。
- 日本を含む温帯地域において夏季の急性熱性疾患の病原体の代表である。
- 小児の代表的なエントロウイルス感染症は、無菌性髄膜炎、手足口病、ヘルパンギーナなどで、発熱と上気道炎を主症状の夏かぜや発疹症などの流行を起こしている。
- 型別に見ると、エコーウイルス30(E30)が最も多く、次いで、コクサッキーA群ウイルス16(CA16)、CA4、コクサッキーB群ウイルス5(CB5 )、E9の順であった。
- 大部分のエントロウイルスウイルスは、咽頭と腸管の両方で増殖する。咽頭からウイルスが分離するのが、1週間未満で、便中には、数週間排泄される。
潜伏期間 †
3~6日である。
ヘルパンギーナ †
概念 †
- 主にコ*クサキーA群ウイルスの2、4、6、8、10型の感染によって発症する。
疫学 †
- 乳幼児に春から秋にかけて流行する。6~?月、特に7、8月に多く見られる。
- 好発年齢は、1歳で、90%の例が4歳以下である。
- 感染経路は、飛沫感染である。
症状 †
- 潜伏期は、2~4日である。
- 突然38~39℃以上の発熱で発症する。咽頭痛が現れる。
- 口蓋咽頭部に1~2mmの淡紅色小丘疹が見られる。
2~3日で水泡、潰瘍化し、咽頭痛、嚥下痛がひどく、食欲不振となる。
- この粘膜疹は、口蓋垂周囲の軟口蓋に限局し、歯肉、舌に認めない。
- 1~4日で解熱し、7日以内に完治する。
治療 †
- 対症療法を行う。
- 脱水に注意し、経口摂取できなければ早めに輸液を行う。
無菌性髄膜炎 †
定義 †
- 発熱、頭痛、嘔吐を主症状とし、項部硬直などの髄膜刺激症状を認める非化膿性急性中枢神経感染症である。
病因 †
- 主にウイルス感染で発症し、エントロウイルスウイルスとムンプスウイルスのよるものがほとんである。
疫学 †
- 夏季の無菌性髄膜炎は、エントロウイルスウイルスによるものが多く。好発年齢は、学童以下が多い。
症状 †
- 発熱、頭痛、嘔吐などで、急激に発症する。
- 項部硬直、Kernig徴候などの髄膜刺激症状を認める。
- 熱性けいれんを伴うこたがあるが、脳炎を合併しなければ、意識障害を伴わない。
検査 †
- リコールは、外見上透明で、軽度~中等度の細胞増加(数百/μl以下)
- 細胞増加は、単核細胞優位であるが、エントロウイルスウイルスの場合は、初期に多核細胞優位の事が多い。
診断 †
- 発熱、頭痛、嘔吐、髄膜刺激症状を認めれば、髄膜炎が示唆される。
- 乳児、特に新生児では、髄膜刺激症状を認められない事が多く、哺乳力低下、不機嫌や大泉門の膨隆に注意する。
予後 †
予後は、ほどんど良好である。
急性出血性結膜炎(アポロ熱) †
概念 †
- エントロウイルスウイルス70型とコクサッキーA型24型で起こる。?台から成人に多く、年少児に少ない。
- 1969年、アポロ宇宙船が月に到達した年にアフリカのガーナで発症し、翌年の1970年に世界に広がったので、≪アポロ病≫とあだ名がついた。
疫学 †
- 夏季に流行する。指やタオルで摂取感染する。潜伏期は、1日。
症状 †
- 急激に発症して、眼脂、流涙、眼瞼腫脹、結膜充血が見られる。
- 結膜の粘膜下出血が特徴的である。1週間で回復する。
診断 †
+確定診断は、髄液よりウイルス分離。PCRによる核酸検出。
+中和反応(NT)など血清診断。
〔治療〕
・対象的に行う。